Live at Hammersmith Vol.1 & Vol.2
The Enid
イギリス : 1983年
 エニドの1979年ハマースミス・オデオンでのライブを収録した、2枚組の大傑作。
 デビュー当時から「あのサウンドをライブでどうやって再現するのか?」と話題になっていた彼らですが、当アルバムで見事なまでにその回答をロック・シーンに叩き付けました。まさに完璧なまでのライブ・パフォーマンス。冒頭イギリス国歌からアンコールの「威風堂々」に至るまで、終始鳥肌が立つような究極の「シンフォニック・ロック」が聴き手を圧倒します。エニドの2nd、3rdの2枚がスタジオ盤としてのシンフォ・ロック史上最高傑作なら、当アルバムはライブ・レコーディングとしてのシンフォ・ロック最高傑作です。(これを上回るシンフォ・ロックのライブ盤があったら、教えて欲しいくらいです(笑)。)
 さて問題のシンセ・オーケストレーションですが、R.J.ゴドフリーを含め3〜4名で演奏されているようです。選曲も1st〜3rdまでの代表曲は漏れなく網羅され、特に未完成であった1stの曲は、本ライブにおいて初めて完成された姿を現しています。メンバー的にもリカーリッシュ等を抱したベストな編成で、エニドのピーク時におけるライブの感動的な素晴らしさを、余すところなく伝えています。
なお、その後、奇跡的にも本作のステージ映像もDVDでリリースされました。
 

 
Mandalaband
Mandalaband
イギリス : 1975年
 マンダラバンドのデビューアルバム。バンド名やジャケット、歌詞が「チベット語(笑)」で歌われていることなど、宗教色が強い印象を持たれがちな彼らですが、サウンド的には極めて英国的な純然たる「ブリティッシュ・プログレ」です。
 旧レコードのA面全てを費やした大作「マンダラ組曲」は、チベット語で朗々と誦い上げるボーカルのバックに、ヴィック・エマーソンによる壮大なシンセ・オーケストレーションと合唱団を配置した、プログレ史上屈指の「ロック・オペラ」です。全体が4つの楽章に分かれ、シンフォニー的な壮大さとオペラ的なドラマ性とが一体となったこの曲は、いわゆる「起承転結」的な構成が取られていません。常にクライマックスに向かって「ひたすら単方向的」に、冒頭から最後までずーっとピーク全開のままに盛り上がりを持続・拡大し続けるという(笑)、なかなか珍しいタイプの大傑作だと思います。
 また、比較的リズムが弱くなりがちなシンフォ・ロックの中にあっても、この初期マンダラバンドに関しては例外といえます。リズム・セクションおよびギターがカンタベリー系のロックに通じるような完全な「ジャズ・ロック」であり、ギターとドラムのスリリングな疾走感がサウンドをグイグイ引っ張っていく点が非常に魅力的です。
 なお、1978年には2ndアルバム「The Eye of Wendor」が制作され、こちらは豪華なゲスト・ミュージシャン多数をフューチャーして、より幻想的なイメージの「ファンタジー絵巻」が展開されています。

 
Six Pieces
The Enid
イギリス : 1980年
 エニドの4thアルバムであり、初期エニドの終焉を飾る作品。邦題も同じ、「シックス・ピーシズ」。
 当コーナーで本作を紹介するのは、多少気が引ける感じがする。と、いうのもエニドの作品としては前作よりやや下降線ぎみだと感じるし、前作「タッチ・ミー」で自らの音楽の頂点を極めてしまった彼らが、進むべき次の到達点に苦しんでいるように思う。
 楽曲的にはメンバー1人で1曲、という形式をとっており、何かメモリアル的ですが、この時期あるいは、バンドの解散がすでに決定していたのかも知れません。ただその楽曲が、以前の作品の「リメイク的な」印象がややあることで、「似たような」曲想の曲が多いです。やはり、やや煮詰まっていたのかも知れません。
 ただそれはエニドの他の作品と比較した場合に言えることで、その点を無視すれば本作が彼らのオリジナル・アルバムとして、魅力ある作品であることに変わりはありません。エニドの音楽でしか聴けないハッとさせられるような美しい瞬間が、アルバムのあちらこちらに散りばめられています。
 エニドの作品としては、ギターのフランシス・リカーリッシュの官能的なプレイが聴けるのも、本作が最後です。初期エニドの中核は、ロバート・ジョン・ゴドフリーのシンセ・オーケストレーション以上に、コンセプト・メーカーたるフランシス・リカーリッシュの精神性であったと、しみじみと感じさせる1枚です。

 
Journey to The Center of The Earth
Rick Wakeman
イギリス : 1974年
 イエスのキーボード奏者、リック・ウェイクマンの2枚目のソロ・アルバムで、ライヴ録音盤。邦題は「地底探検」。ジュール・ヴェルヌの同名SF小説を音楽化した、一大スベクタクル絵巻です。ウェイクマンのキーボード群を中心に、バンド・アンサンブルにフル編成のオーケストラ、合唱団まで従えて、壮大な「ロック交響曲」が展開されています。
 ただウェイクマンの音楽を語るときに1970年代であれば、「芸術性が云々...」といったトーンが一般的であったようですが、当時は視点がずれていたように思う。このヒトは自分好みの作曲家から適当にモチーフをカッパラってきて、創作意欲にまかせて自由奔放に音楽を展開しているにすぎないです。だから本作でも、「どこかで聴いたような(笑)」メロディーがあちらこちらに飛び出してきます。きっとクラシック・マニアの人に聴かせたら、爆笑モノのハズです。
 つまり「芸術性が...」と論じられるような高尚な音楽ではないのですが、「クラシカル・ロックが高尚でなければならない」というのも、明らかに偏見です。
 本作は、上質なエンターテイメント作品として、手放しに音楽を楽しんで正解です。壮大なSFワールドが、確実に聴き手を魅了してくれます。
このコーナーでは、友部オススメのシンフォニックロックの名盤をご紹介しちゃおーと思います。
どれもシンフォ・ロック・ファンなら買って損はない名作ばかり!!...まー好き嫌いはあるかとも思いますが...
 
Alessandra
I Pooh
イタリア : 1972年
 イタリアン・ポップといえばこのグループでしょう!!、イ・プーのCBS移籍2枚目のアルバムであり、不朽の名作。邦題は「ミラノの映像」。イタリアン・ポップスの金字塔的作品として、いまだに本作を宝物のように思っている日本のファンも多いことでしょう。
 冒頭からいきなりイタリアならではの美しい弦楽奏、そこからはもう最後まで一気に「甘美で感動的なラヴ・ロック・ワールド」です。センチメンタルな甘酸っぱい情感いっぱいのメロディーを、カンツォーネを思わせる感動的なボーカルとコーラス・ワークが誦い上げる。さらに大々的に導入されたオーケストラが、音楽をここまでもと思わせるほどに盛り立てています。正に「イタリアの宝」。
 日本で聴くならやっぱ秋が良いでしょう。秋空と枯葉、それに黄金色の日差しが一番似合うのが本作です。
 残念なことにイ・プーは、本作を最後にリード・ヴォーカルであり音楽面でのリーダーでもあった、リッカルド・フォッリが脱退してしまいました。その後も秀作を発表し続け、イタリアン・ポップスの大御所として元気に活躍を続けていましたが、近年、正式に解散を宣言しました。

 
Concerto Grosso Per I
New Trolls
イタリア : 1971年
 イタリアが誇る至宝のシンフォニックロック、それが本作ニュー・トロルスの「コンチェルト・グロッソ1」です。正に「バロック音楽とロックとの融合」という表現が相応しい、イタリアン・ロック史上5本の指に入るであろう名盤です。どこまでも艶やかな弦楽器と、むせび泣くギター、限りなく美しい旋律と、ドラマティックな曲展開。ここまで「感動的な」シンフォ・ロックはちょっと他に類を見ません。平凡な表現に終わっていますが、要は「素晴らしすぎて相応しい言葉が見付からない」ぐらいなのです。未聴の方はぜひ一聴をおすすめします。大いなる感動をお約束します。
 なお、1976年には続編の「コンチェルト・グロッソ2」がリリースされていますが、こちらも本作同様に素晴らしい作品です。1&2で一つのトータルな作品となっているので、両方ともおすすめです。
 また、2001年にはニュー・トロルスの中心人物、ヴィットリオ・ディ・スカルツィ名義でコンチェルト・グロッソのライヴ盤も発表されており、こちらも感動的な内容です。
 
Steven Schlaks (Best)
Steven Schlaks
イタリア : 1979年
 これもやっぱイージーリスニングで、スティーヴン・シュラックスのベスト盤です。
 この人、1970年代後半から1980年代初頭にかけてはかなりメジャーだったはずなのに、その後完全に忘れ去られてしまいました(泣)。日本ではCDさえも手に入らない(欲しい人はアナログ盤を探すべし)..。でも私にとっては、一方の「神様的」存在なのです。
 とにかく楽曲が美しい。とてつもなく甘美なアトモスフィアを醸し出してくれます。しかもアレンジがいい。生の弦楽の替わりにシンセサイザーを使用するなどお手のもので、当時としてはかなり凝ったシンセの音も多用されており、空間的な広がりが宇宙的でさえあります。そこに感動的な混声合唱が入ってくるから、もうこたえられない。本当に「ドラマティック」なのです。最後のダメ押しは、「リズムがちゃんとロックである」。シンフォニックロックが好きな人なら、絶対気に入ると思います...。
 日本で、いや世界で、最も再評価されて欲しいと願っているアーティストの一人です。
 
Sweet People
Sweet People
スイス : 1978年
 え〜っ!!ここは「シンフォニックロック」を紹介するコーナーじゃないのぉ〜??とか言ってるあなた、ごめんなさい。これ、シンフォ・ロックじゃないです。純然たる「イージーリスニング」です、あしからず。
 スイスのスウィート・ピープルは1978年に彗星のごとく現れて、「フィジーの森の中で」というシングル(エレピの流れる中を小鳥のさえずりが聴こえるだけの、変わった曲)を、全米で大ヒットさせました。本作は彼らのデビュー・アルバム(邦題は「想い出のフィジー」)。
 ...で、なぜここで取り上げたかというと、彼らは当時「正体不明の謎のバンド」とか言われながら、サウンドを聴いてみると、なんとメロトロンを多用しています。シンセやエレピの使い方も彼らならではの、独特な空間的広がりがあって、さらに曲のメロディーが美しいときているから、もう放ってはおけません。ハッキリ言って私は大好きです。
 ムードのある美しい音楽が好きな方にオススメ。
 
La Fete Sauvage
Vangelis
ギリシャ : 1976年
 ヴァンゲリスが1976年に発表した同名映画のサウンドトラック盤。邦題は「野生の祭典」。
 ところで、ヴァンゲリスで1枚だけ選ぶってひじょ〜に辛いです。。この人本当に間口が広くて、作風が多彩で、全作いいところがあるから、決め手の1枚が絞れない。...で、個人的にメロディーの美しさで選ぶなら、やっぱ本作でしょう。
 全体がパート1、2に分かれていて、後半はエスニックなリズム音楽だけれど、前半はとても美しいシンフォニック・ワールドです。素晴らしいメロディーラインを女声ボーカルとシンセがユニゾンするバックで、「あの」ストリングスとブラスが広がって流れて行きます。アフリカの広大な原野が目の前に広がってくるような、ヴァンゲリス・ワールドです。
 ちなみに輸入版でCDも入手可能ですが、ジャケット違い(ライオンが交尾しているやつ)で、パート1,2が日本盤とは逆になっています。どうやらこちらの構成がオリジナルのようですね。
 
SKY2
SKY
イギリス : 1980年
 クラシックギター界のプリンス、ジョン・ウィリアムスが1979年に結成したプロジェクト、スカイの2ndアルバム。他のメンバーとしては元カーヴド・エアーのフランシス・モンクマン(Key)を抱していた。本作は発表後いきなり全英No1に輝き、彼らの知名度を決定的にした。
 シンフォニックロックと言うよりは(特に大仰なオーケストレーションが入る訳ではないし)、むしろクラシックとロックとの融合として見るのが妥当であろう。ジャンル的にはフュージョンにカテゴライズされているようだが、実際彼らを好んで聴く人はほとんどがプログレ・ファンであるという、変なアルバムである。
 彼らの音楽界での最大の成果は、クラシックとロックの融合といっても、70年代プログレ全盛期のように大上段に構えず、むしろロックとイージーリスニングの中間的な「ソフトなロック」に位置付けた音楽として、一定の分野を開拓したことに尽きると思う。全篇リラックスして聴ける美しいサウンドに溢れている。
 ちなみに1983年には来日している(私、観に行きました...)。
 
Live in Concert with Edmonton Symphony Orchestra
Procol Harum
イギリス : 1972年
 プロコルハルムの6thであり初のライブアルバム。日本では「プロコルハルムと言えば青い影」といった感じだが、10年間の活動で10枚のアルバムを発表している(90年代の再結成は除く)。ロックとクラシックとの融合における先駆者として、70年代に大英帝国が誇る存在であった彼らを忘れてはならない。
 本作は特にオーケストラおよび合唱団との競演盤として、最もシンフォニックな印象が強い作品。全篇で壮大かつダイナミックな演奏が聴かれる(特にエンディングは圧巻)。またアルバム後半に組曲「In Held ’twas in I」が収録されているが、同曲発表は1968年であり、当時ロックのフィールドにおいてこのような組曲はほかには存在しなかったのである。
 さらに忘れてはならないのは、彼らが天才的ドラマー、故B.J.ウィルソンを抱していたことであり、彼の独特な、ドラムをメロディー楽器として「歌わせる」ドラミングは、ブリティッシュ・ロック史上に永遠に残るものである。
 
The Spell
The Enid
イギリス : 1985年
 またエニドです...すみません、やっぱ大好きなんです〜。それにシンフォニックロックとしては、やはり至高の存在だと思う。
 本作は彼らの6thアルバム(ライブを除く)。初期のシンフォニック路線と、5thのいきなり歌物ポップ路線との、統合を目指した作品と言えそう。全体的な統一感にはやや欠ける印象もありますが、完成度は極めて高いです。
 全体の3/4が大作の組曲「The Spell」で構成されており、そのエンディングでは彼らならではのドラマティックな大団円が聴かれる。また、同曲前半ではデイヴ・ストーレイによる超人的なドラミングも披露されており(おそらく彼のベスト・プレイと思われる)、聴き所は多い。
 彼らの音楽への、マーラーやワーグナーからの影響を一番露骨に感じさせられるのも本作である。
 
Aerie Faerie Nonsense
The Enid
イギリス : 1977年
 エニドの2ndアルバム。日本では何かというと1stばかりがあたかも代表作であるかのように取り沙汰される彼らだが、明らかに認識が誤っていると思う。1stでの彼らは未だ発展途上の段階にあり、本作品2ndにおいて、初めて自己の方法論を明確に確立するのである。
 本作は後半部分に彼らの代表作であろう、組曲「Fand」を含んでおり、またアルバム全体を通じてのシンフォニックで限りなく美しいトーンは絶品である。
 
 
Touch Me
The Enid
イギリス : 1979年
 エニドの3rdアルバム。彼らが頂点を極めた最高傑作である。ロックがここまでシンフォニックになれる、というお手本のようなもの。(まあどこまでロックかは怪しいが...)
 全体的に限りなく巨大なシンセ・オーケストレーションと、どこまでも甘美なギタープレイ。そこにドラムスが他パートと対峙するメロディーパートとして絡みこんでくるあたり、彼らならではの世界が展開されています。しかも彼らの場合は、これをライブ演奏で完璧なまでに再現してしまうからなおコワい。あくまでもドラマティックで大仰な曲想は、まあ好き嫌いが別れるところでしょうけど、私にとってはもうバイブル的存在です。
 サウンドイメージ通りのジャケットもGood。
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