アイ・イン・ザ・スカイ Eye In The Sky |
アラン・パーソンズ・プロジェクト Alan Parsons Project |
1982年 : イギリス |
アラン・パーソンズ・プロジェクトの通算6枚目のアルバム。前作「運命の切り札」でビルボード・チャートの大ヒット曲を2曲生み出し、まさに「油が乗り切った」時期の彼らの名盤です。レコーディングでは総勢95人編成の大オーケストラを導入するなど、話題性もダップリで大ヒットした1枚です。 アラン・パーソンズ・プロジェクトというと当時はある種「謎めいた」プロジェクトと見られがちでしたが(ライヴを1回も演らなかったので、公衆の面前には現れなかった...)、実体はアラン・パーソンズとエリック・ウルフーソンの2人によるプロジェクトです。そこに「主にパイロット系列の」プレーヤー達が加わって、独自の世界を形成しています。個人的には前作「運命の切り札」(シングル・カットされた「タイム」を初めてFENで聴いたときには、その美しさに鳥肌が立った...)、そして本作、さらに続く「アンモニア・アベニュー」、「ヴァルチャー・カルチャー」あたりまでが一番の「旬」かと思います。 アラン・パーソンズ・プロジェクトっていうと、一応はイギリス人のプロジェクトなんですが、特にバラード・ナンバーに見られるような「ヨーロッパの映画音楽を聴いているような、洗練されたロマンチシズム」がもう大好きなのです。さらにそういったナンバーでは、中心人物の一人でもあるエリック・ウルフーソン他のハイトーンで透明感のある男声ボーカルがマッチして、宇宙的とも言える空間を生み出しています。(一部では、「アラン・パーソンズ・プロジェクトの男声ボーカルは、なぜみんなオカマチックなのか??」なーんて陰口も叩かれてたみたいですが...(笑)) さらにアラン・パーソンズ・プロジェクトっていうと、曲調は大体4種類ぐらいに分類できて... 1.軽快なポップ・チューン 2.美しいバラード・ナンバー 3.デジタル・テクノ的なインストゥルメンタル・ナンバー 4.交響楽的な大作 なんて感じなんですが、そのそれぞれのピースを「プログレのペーストを使って」上手に1つのアルバムにまとめ上げている点がさすがだと思うのです。アラン・パーソンズ自身もインタビューの中で、「自分の音楽は、映像的サウンドが根底にあるミュージカル・シアター」なんて表現をしていましたが、各楽曲がこれだけポップでありながらも、アルバム全体的に起承転結のストーリー性を強く感じさせて、1枚通しで聴くととってもドラマティックな点が、最大の魅力だと思っています。だから全米のヒットチャートなんかに数多くヒット曲を飛ばす存在でありながら、一方でいまだに「プログレ・マニアから強烈に崇められている」存在でもあるのですね。 ハナシは戻って本作。旧レコードならA面最後の「静寂と私」の美しさが、もう圧巻です。当時は某時計(だったか??)のCMにも使用されていて、幻想的な映像とのマッチングがGOODでした。さらにアルバム最後の「オールド・アンド・ワイズ」に至っては、最初聴いたときは「なんか、演歌っぽい??」なんて思いましたが(失礼...)、時代を経ていいサウンドになってる。この2曲で個人的には「ベスト・アルバムほぼ決まりっ!!」なのです。 ちなみにプロジェクト解消後は、アラン・パーソンズ・ライヴ・プロジェクトとして数回来日公演もしています。私は2回ぐらい観に行きましたが、ステージ自体は素晴らしかったものの、やっぱスタジオ盤の再現性といった意味ではちょっと厳しいようで...。 エリック・ウルフーソンの他界により、再結成はありえなくなったことが、残念でなりません。 |
神話の中の亡霊 Time Honoured Ghosts |
バークレイ・ジェイムス・ハーヴェスト Barclay James Harvest |
1975年 : イギリス |
イギリスが生んだ「愛すべき万年B級バンド」(笑)の、ポリドール移籍後2枚目のアルバム。比較的ポップになったと云われるバークレイ・ジェイムス・ハーヴェスト(以下B.J.H.)のポリドール時代の作品群の中では、メロの美しさや叙情性で本作が一番出来が良いと思います。 B.J.H.というと一般に初期のEMI時代4枚の評価が高いですが、確かに「モッキン・バード」などの佳曲も多い中で、あの録音の古めかしさだけはどうしても頂けないのです。だから個人的には録音もしっかりして、音楽的にもコナれたポリドール時代のほうが好きです。ただしEMI時代のあのロバート・ジョン・ゴドフリー大先生のオーケストレーションだけは、確かに現在でもポピュラー・ミュージックのアレンジの限界を超えていると思っています。なんせフツーの歌ものロックが、「バックのオーケストラだけはマーラー」(笑)なのですから。近年の発掘音源である当時のBBCライヴなんかを聴いてみても、あのオーケストラとの競演時代のサウンドは正に「画期的」です。あの方向で突き進めば、あるいは「万年B級バンド」(笑)なんて呼ばれずに済んだかも知れない...。 で、なぜに彼らが「B級バンド」なのかというと、ひとえに「ムーディー・ブルースに似すぎてる」からだと思っています。以下の点で、ムーディーズにソックリ。 ・ギター兼ボーカルと、ベース兼ボーカルが2大フロント・マンである。 ・ドラマー以外が全員作曲をし、自分の曲ではリード・ボーカルも取る。 ・キーボード奏者の主な使用楽器が、メロトロンである。 ・バンド初期には、オーケストラと競演していた。 ・音楽自体が、メロディアスな、英国調叙情派ポップ・ロックである。 ・オリジナル・メンバーの中では、キーボードが一番最初に脱退した。 ...と、ここまでクリソツであるにも拘わらず、致命的なのはメンバー全員がムーディーズほどの強烈なタレント性・キャラクターに恵まれていないことで、それが音楽面でもキャッチーな点でイマイチな結果となってしまった理由でしょう。同類のトップ・バンドがいる上に「メンバー全員がちょっと小粒」なので、「万年B級バンド扱い」されてしまうのですね。(...でも、個人的には大好きなんだけどネ(笑)) あとB.J.H.といえば、本作のように、主にポリドール時代のジャケット・アートが非常に美しいことでも有名です。でも「中身の音楽に比してジャケットが美しすぎる」カンジがします。これわもう完全に「ジャケット負けしてる」ぞ。(笑) 美しいジャケットに惹かれて買って、聴いてみたら意外に当たり前の音楽でガッカリして放り投げたヒト、ケッコウ多いんじゃないかなぁ??(笑) |
エレクトリック・サヴェイジ Electric Savage |
コロシアム U Colosseum U |
1977年 : イギリス |
コロシアムを取り上げたので、コロシアム Uも取り上げてみました(笑)。野心家ドラマー、ジョン・ハイズマンがコロシアム、テンペストに続いて1975年に結成したブリティッシュ・ジャズ・ロック・バンドの2枚目。当時のイギリスで言えばブラッフォード、ブランドXと並び称される名バンドです。ちなみにオリジナルのコロシアムとは音楽的な脈略は全くナシ。あくまでレコード会社との契約目的で、バンド名を半ば強引に「コロシアムなんとか...」にさせられたというシロモノです。 良く言われることですが、この頃のコロシアム Uは「アメリカのリターン・トゥ・フォエバー(以下R.T.F.)に対する、ブリティッシュ・ロックからの回答」と捉えて、まず間違いないです。クロスオーバー的なインタープレイの応酬は、もう笑っちゃうぐらいに中期R.T.F.に酷似しています。ただそこはさすがイギリス人、あくまでもベースは「ブリティッシュ・ロック」なので、音楽的な感触はアメリカのクロスオーバーとは全く違った重さと風格をたたえています。私個人的には、ジャズ・ロックはこういったテイストが一番好きです。 アルバム3枚と短命に終わってしまったバンドですが、一枚目「ストレンジ・ニュー・フレッシュ」はまだバンドとしては未完成で、ボーカルものとインストものとのバランス的な方向性が定まっていない感じがします。続く本作はその迷いも吹っ切れて、インストもの1本でいく決意もあからさまに豪快なインタープレイの応酬で、燃えるようなアルバムです。個人的には最高傑作に挙げたい。続く3枚目「ウォー・ダンス」も本作と同一線上ながら、ほぼ同時期に録音されたとはいえ、若干ボルテージは低下してきているようで、本作のほうがオススメだと思います。 あと、コロシアム Uといえばジャズ・ロックなんですが、ブート等で多く出回っている当時のライヴを聴いてみると、ジャズ・ロックにあるまじき、意外と「構築型」です。つまりスタジオ・レコーディングの正確な再現としてライヴを演奏していて、インプロヴィゼーションの比率が思いのほか少ないです。これはそもそもが2大フロント・マンであるゲイリー・ムーア(Guitar)とドン・エイリー(Key)がどっちも根本的に「ジャズ畑のヒト」ではないからで、その後の経歴を見てもハード・ロックに帰結してしまうこの2人は、きっとジャズ的なインプロはあまり得意ではなかったのかも知れません。さらに言えばベースのジョン・モールは唯一「ジャズ・マン的」なのですが、でもこのヒト、こもテの音楽を演るにはもーちっと華があっても良いよーにと思うぞ(笑)。同類のバンドのパーシー・ジョーンズやジェフ・バーリンに比べると、ちょっと目立たない。 このバンドも、ギターのゲイリー・ムーアとドラムのジョン・ハイズマンがすでに鬼籍入り。残ったドン・エイリーは近年ディープ・パープルを抜けて、ソロ・ライヴでコロシアムUの楽曲も演奏している模様。 |
ヴァレンタイン組曲 Valentyne Suite |
コロシアム Colosseum |
1969年 : イギリス |
1960年代後期の英国ジャズ・ロック・シーンを支えた、天才ドラマー、ジョン・ハイズマン率いる名門バンドの2ndアルバム。 彼らの4枚のアルバム中、最もプログレッシヴ・ロック寄りの内容を持ち、それゆえプログレ・マニアには圧倒的な支持を誇る超名盤です。 個人的な好みを言えば、コロシアムは1stと本作が一番好き。つまりヴォーカル兼ギターにジェームス・リザーランドが在籍していた時代が好み。サウンド全体の絶妙なドライヴ感と、ブリティシュ然とした、何とも言えない「いかがわしさ」(笑)がたまらないのです。 3rdでの「ビッグバンド化」や4thライヴでの「ケダモノ的超壮絶バトル(笑)」も良いのですが、この2ndからの進化形と考えると、ちょっと違和感を感じます。クリス・ファーロウは確かにブリティッシュ・ロック界を代表する名ソウル・ヴォーカリストなのだけれど、3rd以降のメンバーチェンジは、バンドを「愛すべきイカサマ・バンド」(笑)から、「ブリティッシュロックの王道バンド」へと変えてしまった...。 本作はなんと言ってもレコードだとB面全部を費やした名曲「ヴァレンタイン組曲」を含んでおり、そこではデイヴ・グリーンスレイドによるほとんど神がかり的なオルガン・ソロも聴かれます。良くこの時期のコロシアムを「ジョン・コルトレーンとプロコル・ハルムを結び付けようとしたバンド」と評されることがありますが、あながち外れではないと思う。特に1stには「青い影」の改作である「ビウェア・ジ・アイデス・オヴ・マーチ」が収録されていたように、おそらくグリーンスレイドが持ち込んだのであろう、プロコルの影響(クラシカル・ロックの要素)も濃厚です。 さらにタイトル・ナンバーの「ヴァレンタイン〜」に関しては余談になりますが、当時のライヴでは、エンディングに続いてそのまま「ビウェア〜」にメドレーでなだれ込んでいってる。もうその展開が、すっごくドラマチックで感動的なのです。こういった「クラシカルな高揚感」も、3rd以降はなくなってしまいましたね。 当のバンドは1990年代に再結成されましたが、ディック・へクストール・スミスに続いて近年、リーダーのジョン・ハイズマンまで他界してしまいました。 ただ近年、ドラムの後任に元ジェントル・ジャイアントのマルコム・モルティアを迎えて、バンド継続するらしいことが発表されました。 |
ジェラルドの汚れなき世界 Thick As A Brick |
ジェスロ・タル Jethro Tull |
1972年 : イギリス |
ジェスロ・タルの通算5枚目にして、最高傑作。アルバム1枚で1曲という、70年代当時流行ったコンセプト・アルバムの代表作です。 ...と、ここまで書けば一般的なレビューですが、ところがどっこい、本作には隠れたエピソードが尽きない。 まず本作が代表的なロックのコンセプト・アルバムであるという点。本来イアン・アンダーソンは当時全盛を極めた「コンセプト・アルバム」なるものを、徹底的におちょくる為の「パロディー」として本作を制作しました。が、あまりにも出来が良かった為に全米チャート1位にまでなるばかりか、果ては制作意図に反して本末転倒にコンセプト・アルバムの代表作として逆認知されてしまう始末。 次に、本作の歌詞。英国文学推進協会が主催する詩のコンテストで、8歳の少年ジェラルド・ボストックが書いた詩が優勝し、しかしながら詩が放送されるや否やその内容から非難が殺到、優勝が取り消されたというエピソード。そのいわくつきの詩に、音楽を付けたという背景。これらが全て、アンダーソンによるデッチ上げ。つまりデタラメ。実は詩もアンダーソンによる自作。 さらに、本作のジャケットでダメ押し。変形の折りたたみ式で、広げるとちゃんとしたタブロイド紙(低俗な大衆新聞紙)になる。ここに書かれている記事がカナーリ怪しい(笑)。モモが広がっていて物が入る「ショッピング・ブーツ(笑)」やら、「手のヒラだけを使っていいサッカー(笑)」やら...おまけにあちこちに掲載されている写真には、アンダーソンらしき髭もじゃの男が何気なく写っている...そう、これらもぜーんぶアンダーソンによるデッチ上げ(笑)。 つまりはアルバム全体が、一流の英国人ユーモアによって貫かれた「パロディー」なのです。ただしその正体は後年になってから明らかにされたわけで、本作の発表以降は長い間「高尚なアート・ロックの代表作」として認知されていました。これ程までに人を喰ったアルバムもないでしょう。 ただこういったいわゆる裏話は別にして、本作が超一流のプログレッシブ・ロックとして、ロック史に残る内容を持っていることには変わりありません。ロック、トラッド、クラシック、ブルースを巧みに融合したジェスロ・タルならではの楽曲は、45分に近い1曲を全く飽きさせることなく一気に聴かせる構成力を持ち、また「無駄な音など1つもない」ほど完璧でスキのない超絶技巧のアンサンブルは、まさに名人芸の一言に尽きます。 英国が生んだ天才吟遊詩人、イアン・アンダーソンの他に比類なき音世界を堪能するには、格好の1枚です。 |
チューブラー・ベルズ Tubular Bells |
マイク・オールドフィールド Mike Oldfield |
1973年 : イギリス |
天才マルチ・プレイヤー、マイク・オールドフィールドのデビュー作であり、ヴァージン・レーベルの記念すべき第1弾。インストゥルメンタル・ロックの大傑作として、世界的な大ヒットとなりました。 よく本作を「元祖ニューエイジ・ミュージック」みたいに言うヒトがいるけれど、ハッキリ言って認識が誤っているように思う。「ニューエイジ・ミュージック」=「音楽的に内容の乏しい雰囲気に流されるだけのBGM」に対して、本作の特徴は、その圧倒的な構成力と音楽的密度の高さにあるからです。マイクの音楽は本作に限らないことですが、限られた時間の中に凝縮された音楽的濃度には驚くべきものがあり、まさに「1秒1瞬たりとも気を緩めては聴けない」ほどです。その意味で「ただ雰囲気に流されるだけのBGM」とは、まさに対極にある音楽だと思います。 さらに、本作に限って言えば特に「聴き手の積極的な関与を要求する」音楽であると思います。非常に繊細な形で表現されたマイクの感性は、漫然と聴いていると聴き手の感性を素通りしてしまいます。これが本作を「ニューエイジ・ミュージック」と誤解されてしまう所以です。非常に注意深く、「アーティストのデリケートな感性を汲み取るように」聴くことが要求される音楽です。 上記の条件を満たしている限り、本作は聴き手に大いなる感動を与えてくれます。主にアイリッシュ・トラッドをベースとして様々な音楽的要素を融合させた緻密な音楽は、イングランドの美しい自然の風景が眼前に広がるような、原点回帰的なノスタルジーを与えてくれます。(オカルト映画「エクソシスト」のサントラ盤としても使用されましたが、もちろん、オカルトとは一切無関係。あくまで自然の美意識に貫かれた音楽です。) また、後の作品(軽く20作を超える)を聴くと、マイクはギタリストとしての腕前も天才です。ピックをほとんど使わずに爪で弾く独特な奏法は、「エレキ・ギターを民族楽器のように奏でる」といった表現がピッタリで、トラッドの影響の強いフレージングと相まって、聴き手を童心に帰してくれます。おそらく唯一無二のギタリストでしょう。 とにかくアルバム1枚で1曲か、または半分には大作1曲が必ず入る彼の作品においては、インストゥルメンタルのみで大作を緻密に表現する圧倒的な構成力があります。一般的にプログレッシヴ・ロックの範疇で語られることの多いマイクですが、本来は「現代音楽」の領域で、評価されるべきアーティストだと思います。 |
詠時感 〜 時へのロマン Asia |
エイジア Asia |
1982年 : イギリス |
エイジアのデビュー・アルバム。ビルボード1位に輝く世界的な大ヒットとなりました。(まあ、当のゲフィン・レコードは、本作を売る為のプロモーションに湯水のごとく金を注ぎ込んだとはいいますが...(笑)) とにかく当時の80年代プログレたるや、売れなきゃ売れないで「過去の遺物」みたいな言われ方をし、本作みたいに売れたら売れたで「コマーシャルな産業ロック」のレッテルを貼られてしまうのだから始末が悪い。 で、本作ですが、ハッキリ言って私は大好きです。ポップなサウンドの中にプログレ特有の要素がふんだんに盛り込まれ、2つの異なる方法論を完璧に融合させた見事な大傑作です。さらに光る楽曲の良さも忘れてはなりません。「ポップなプログレは悪い」などというのは明らかに偏見です。当時「エイジアなんぞはブリティッシュ・ロックではない」なんて言うヒトもいましたが、ど〜聴いたらこの音がアメリカから出てくるんだい?? さらに、本作で一番ネックになっているのが、スティーヴ・ハウのギターだと思います。やっぱこのヒトは天才で、対旋律的なギターのラインが醸し出す宇宙的とも言える超空間がなかったら、イエスもエイジアも世界的な大成功は絶対に有り得なかったと感じます。 あとジェフリー・ダウンズのキーボード・プレイもイエスの「ドラマ」当時からの素晴らしさで、時にシンフォニックに、時にクラシカルに、多様でカラフルな色彩をサウンドに与えています。いわゆる「構築型」プログレにおけるキーボード・プレイの、お手本と言ってもいいでしょう。 さらに彼らは翌年、2nd「アルファ」を発表。コマーシャルな方向性はかなり加速し、どれもシングル・カット向きの曲ばかりが並ぶ結果となってしまいました。こちらも秀作ではありますが、プログレ特有の「多様性」といった意味では本作が上でしょう。 その後、「エイジア名物お家騒動」(笑)が勃発。記念すべき初来日公演イベント「エイジア・イン・エイジア」(私、武道館に観に行きました...)では、ボーカル兼ベースの場所にかのグレッグ・レイク氏が立っていたのは、ご周知のとおり。さらにこのトラ・メンバー、前任者よりボーカルのキーがかなり低く、困った他のメンバーが全曲キーを下げて演奏。楽器の性質上フィンガーリングが全く異なってしまう、ギターのハウの演奏がボロボロであったというオマケつき。 |
オクトパス Octpas |
ジェントル・ジャイアント Gentle Giant |
1972年 : イギリス |
ジェントル・ジャイアントの4thアルバム。本作よりドラムスに「鉄人」ジョン・ウェザースが加入し、彼ら自身が曰く「真の意味での出発点となった」記念すべきアルバム。 ジェントル・ジャイアントの音楽というと、複雑な拍子記号(プログレにありがちな変拍子とか複合拍子とか、そんな生易しいモノではない)、前衛的なコードワーク(平気で不協和が当たり前)、超人的なコーラス・ワークなどなど、とにかくトリッキーな仕掛けが多いことではつとに有名です。あのキング・クリムゾンをもはるかに凌ぐ「変態ぶり」(笑)は、プログレ界随一です。なんてったって「音楽を発明しようとしたバンド」なのですから。(まあ、その斬新かつ革新的なアンサンブル構造ゆえ、熱狂的なファンを獲得する一方で、一定以上にファン層を拡大できなかったのも事実なのですが...) しかも様々な音楽的要素が混在しているにも関わらず、ジャズだのロックだのクラシックだのと、ジャンル分けが全く判然としないのも大きな特徴です。一聴して「ジェントル・ジャイアントでしかありえない」サウンド。そんな複雑怪奇な変態音楽を、それでも強烈なビートと超人的なアンサンブル技術で一気に聴かせてしまう。ここまでトリッキーな音楽がここまでポップである、そのこと自体が完全に驚異です。 本作「オクトパス」は、彼らの代表曲の1つでもある「パナージの到来」を含んでおり(その後長いことライブでは、アンコールで演奏されていた)、ジェントル・ジャイアントのサウンドが確立されたことを示す好内容となっています。これ以降、何作も素晴らしいアルバムが続く彼らですが、基本的なフォーマットは全て本作に見ることができます。 あと個人的にはアルバム・ラストの1曲前を飾る「シンク・オブ・ミー」が、大変に好きな曲です。ケリー・ミネアの紳士的な優しいボーカルとピアノをフューチャーしたバラードですが、「変態バンド(笑)」らしからぬ非常に英国的なロマンチシズムに溢れた、美しい佳曲です。 なお、こんな超人的な彼らですが、解散間近のアルバム「ジャイアント・フォー・ア・デイ」あたりを聴くと、「なんで、こ〜なっちゃったかな〜???」と、即死できることウケアイです(笑)。 |