パート1!!
 
At The Rainbow
Focus
1973年: オランダ
 オランダのフォーカスの4thであり、唯一のライヴ・アルバム。邦題は「フォーカス アット ザ レインボー」。彼らの代表曲がライヴらしい躍動感で満喫できる、超名盤です。
 ...とここまではそうなのですが、個人的にフォーカスは曲によって好き嫌いが分かれます。「フォーカス1,2,3...」や「シルビア」など、カチっと決まっている曲は大好きなのですが、このヒトたちは曲によってはどうも音楽にとりとめが無くなる傾向にあるようで、曲全体の印象が散漫となってしまう。そんな意味で、本作の収録曲でも「アンサーズ?クエスチョンズ!...」や「エラプション」などは、個人的にはイマイチです。
 あと、本作のライブ・パフォーマンスは確かに大変素晴らしいのですが、ただ1点、ヤン・アッカーマンのギター・プレイだけはなんか少しヘンです。一説によると、当ステージでのアッカーマンは、アルコールかドラッグで「完全にイッてしまっている」(笑)らしいとのこと。確かにミストーンが目立つし、プレイ自体も勢いだけはやたらとありますが、繊細なギター・コントロールをやや欠いている気もします。
 さらに余談になりますが、フュージョン界の押しも押されぬ大御所であった「パット・メセニー・グループ」なんかは、明らかにこのフォーカスの延長線上で音楽をやっているように思えるのですが、如何なものでしょうか?パット・メセニーを語る上でフォーカスの名前が挙がることはまずない状況が、不思議でならない私です。
 フォーカスの音楽は、ちょうど初夏の木立にきらめく木漏れ日のごとくに、透明で、爽やかで、懐かしく、そして限りなく美しい。そんな彼らの魅力が堪能できる1枚です。
 
Photo of Ghosts
P.F.M. (Premiata Forneria Marconi)
1973年 : イタリア
 イタリアン・ロックの雄、P.F.M.(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)の記念すべきワールドワイド・デビュー・アルバム。邦題は「幻の映像」。1970年代プログレのマスター・ピースとして、非常に有名な1枚です。
 ところがどっこいこの作品、初期P.F.Mの代表作としては、どうかな??(...と思う)。少なくとも私は、次作「蘇る世界」の方が好きだし、バンド自体の活動のピークも次作以降である。しかしながらなぜあえて本作をここで紹介するかというと、何と言っても素晴らしい彼らの代表曲「人生は川のようなもの(River of Life)」が収録されていることと、美しいジャケット、そして大ヒット作という知名度から、あえて彼らの代表作として選んだ次第です。
 本作で一番気になるのは「ピート・シンフィールドによる(おそらく...)オーバー・プロデュース」です。本来P.F.Mはジャズ・ロックや地中海音楽などを基盤とした、激烈なインタープレイの応酬を魅力とするバンドで、その意味で明らかに「動」のバンドだと思う。ところが本作においてはまるでシンフィールドのソロ・アルバム「スティル」の延長線上にあるかのような「静」の叙情性に全体が支配され、過度にソフィスティケートされ「イタリア臭」を希薄にされたサウンドは、P.F.M.本来の持ち味を殺してしまっているかのように感じるからです。またこのことを象徴するかのように、本作発表後のツアーは、ピート・シンフィールドとのジョイント・コンサートとなってしまいました。
 次作「蘇る世界」以降の作品では、シンフィールドのプロデュース域から脱し、P.F.M本来のイタリア的な魅力を余すところなく伝える内容となっています。次作から5thの「ジェット・ラグ」あたりまでが、バンドとしては「旬」でしょう。
 ただ最後に1点、アコースティック・ギターで始まる本作のイントロだけは、誰もが涙する至高の瞬間です。

 
Selling England By The Pound
Genesis
1973年 : イギリス
 ジェネシスの通算6枚目のアルバムで、邦題は「月影の騎士」。ジェネシスも「最高傑作は?」と問われて、意見が分かれるバンドの1つです。一般的には次作「幻惑のブロードウェイ」を推す向きが多いかと思いますが、あの「甘いロマンティシズムとは全く無縁の」作風をジェネシスの代表作としてしまうのは、ちょっとムリがあるかと私は思っています。
 本作はジェネシスの全作品中、最もロマン主義志向の強い作品です。ジャケットのイメージ通りに、全体に午後の柔らかな日差しに包まれているような、ほの明るく暖かなトーンで一貫しています。後に彼らの代表曲と云われる「ファース・オヴ・フィフス」「シネマ・ショウ」など佳曲を多く含んでおり、個人的にはこちらを最高傑作としたいです。
 本作はジェネシス初心者の方にも、まずオススメです。楽曲はポップで親しみ易く、またメロディーの美しさも秀逸です。かといって安易な作品かと思えばさにあらず、変拍子や分数コードなど、高度なテクニックを「そうとは気付かされない自然さで」(これがなかなかムズカシイ...)聴かせてしまいます。
 当時、リーダーのピーター・ガブリエルは、本作の甘ったるい作風に激しく異を唱えました。したがって次作「幻惑の〜」では、本作の反動でおそろしく辛口の作風に転じてしまっているのは、ご周知の通り。
 しかしながら、ガブリエル脱退後の「トリック・オヴ・ザ・テイル」では、また本作の延長線上にあるような中世ロマン主義的な作風に還っています。このことから察するに、ガブリエル以外のメンバーの頭の中では、本作がジェネシスの当時理想としていた作風であったに違いないと思っています。

 
 
The Dark Side Of The Moon
Pink Floyd
1973年 : イギリス
 ピンク・フロイドの通算9枚目のアルバムで、邦題は「狂気」。1973年のアルバム発表後、15年間もビルボード・トップ200にランク・インし続けたという、まさに「オバケ」アルバムである。彼らの最高傑作であると同時に、ブリティッシュ・ロック史上まれにみる大傑作であることは、云うまでもない。
 しかしながら実は私、本作に関してはあまり突っ込んだことが書けない。と、云うのも本作以外のフロイドの作品は比較的苦手であるからで(別に悪いとは言っていないので、誤解無きよう...)、好きなのは「原子心母」「炎」と「アニマルズ」ぐらい。フロイドってプログレ界には珍しく、サウンドのベースがあくまでもブルースであるので、「クラシカル・ロック中心」の私にはどーも波長が合わない。でも本作は大好きです。
 本作は彼らの作品では珍しく、ブルース色はかなり抑えられ、代わりにファンタスティックなコスミック・サウンドが展開されています。美しいシンセサイザーやスライド・ギターがフューチャーされ、色彩感と空間的な広がりが素晴らしい一枚です。また圧倒的にネガティヴな作風の多い彼らの中にあって、ポジティヴなカラーが全体を支配しているのも特徴です。(まあ、ロジャー・ウォーターズの歌詞の内容は、ぜんぜん「ポジティヴ」とは云えないのですが...) そのあたりがおそらく、一般的に圧倒的な支持を得た大きな理由でしょう。 (まっ昼間から日がな「アニマルズ」は、ちょっと重苦しいもんなぁ〜(笑))
 あとロジャー・ウォーターズの歌詞のメッセージ性と、トータルなサウンドのドラマ性とが一体化しているのも、大きな魅力です。アルバム全体に散りばめられたウォーターズのメッセージは、最終的には全てクライマックスの「太陽は狂気日食に侵食されてゆく」の一文に集約されます。まさに鳥肌が立つような、感動的な瞬間です。
 エンジニアはアラン・パーソンズ。あ、書くまでもないよネ...。

 
The Snow Goose
Camel
1975年:イギリス
 キャメルの通算3枚目のアルバムで、邦題も同じ「スノーグース」。キャメルって、結構トータルなキャリアの中で路線が紆余曲折したバンド、だと思う。基本的にはプログレでありながら、デビュー当時は明らかにサンタナを意識したラテン風味ギター・ロックだったし、本作「スノーグース」でいきなりシンフォニックになって、その後クロスオーバーやポップやAORなどを転々としながら、最近の再結成ではラティマー自身の「私的音楽」の要素が強くなりました。でもどんな方向性に転んでも、いずれの時代も「良い結果」を生んでいるので、やっぱり大ファンなのですが...。
 で、本作「スノーグース」は、彼らの作品中最もシンフォニックな(つまりクラシック寄りの)作品です。ポール・ギャリコの小説「白雁」を音楽化した、アルバム1枚で実質1曲という組曲形式の大作で、いわゆる「トータル・アルバム」の典型的な1枚です。全体的に映画のサウンドトラック盤を聴いているようなストーリー性と、ドラマティックな場面展開、そして叙情的を極める音楽の美しさが魅力です。他のキャメルのアルバム見られる「動」の世界とは対照的に、ここにあるのはひたすら感傷的な「静」のキャメルです。さらに全篇に美しいオーケストラも加わり、叙情的な美しさを一層盛り立てています。加えてアンディー・ラティマーの「泣きのギター」の素晴らしさには特筆すべきものがあり、この後多くのキャメル・フォロワーを世界中に生んだのはご周知の通りです。
 本作は次作「ムーンマッドネス」とともに、彼らの最高傑作と言われていますが、この2枚、方向性は全く違うと思います。「ムーンマッドネス」は完全にクロスオーバーを意識した作品です。つまり、「スノーグース」はクラシック寄りで、「ムーンマッドネス」はジャズロック寄り、ハッキリ言って正反対の方向を向いています。そのいずれもとても良いのですが、私個人としては「クラシック寄りの本作に1票!!」なのですね。

 
A Song For All Seasons
Renaissance
1978年:イギリス
 イギリスが誇る水晶のごときクラシカル・ロックの至宝、ルネッサンスの通算7枚目(キース・レルフのオリジナル・ルネッサンスは除く)。邦題は「四季」。ルネッサンスって相変わらず日本での人気が根強いんですね〜。なんてったって曲のメロディーもアンサンブルもバツグンに美しいから、「情緒的な」日本人の感覚にマッチするのでしょうね。純粋にクラシックとロックとを融合させた(あとトラッド色も濃厚)、正にロック界の「19世紀ロマン派」といった面持ちで、正統派の「ロックもここまで美しい!!」なのですね。
 で、そのルネッサンスですが、彼らの最高傑作となると、「シェラザード夜話」「御伽噺」そして本作で多分意見が分かれることと思います。一般的には、6枚目「御伽噺」が一番人気があるようですが、この辺は「幻想的で妖艶な世界が好きなプログレマニア向き」だと思っています。私個人的に「御伽噺」は、「ちょっとあの暗さはど〜もな〜...」なのです。(決して、キライな訳ではないけどね...)
 打って変わって本作「四季」は、全篇自然や愛をモチーフにした、とても明るいトーンに包まれています。曲もポップながら、彼らならではのクラシカルな美しさはそのままに、全体に壮大なオーケストレーションも加味され、四季の移り変わりをセンチメンタルに感じさせてくれる一枚です。たぶん「美しいロマンチックな音楽が好き」な向きの人には、躊躇することなくオススメできる名盤です。ジョン・タウトのラフマニノフを思わせる格調高く美しいピアノと、そして何より「世界で最も美声のボーカリスト」アニー・ハズラム嬢の5オクターブ・ボイスが、聴く人皆を懐かしくも美しい自然の世界に招待してくれます。
 
 
Brain Salad Surgery
Emerson Lake & Palmer
1973年:イギリス
 エマーソン・レイク&パーマーの5作目にして、こちらも最高傑作。邦題は、「恐怖の頭脳改革」。
 個人的にEL&Pって大好きです。なぜなら「いまいちヘタだからw」です(もちろん我々凡人のレベルに比べれば、超人的なテクニシャンであることは言うまでもないことですが...)。技術的にどこかしら難のある3人が、それでも持てる力量の120%を発揮にて演奏している、その「一生懸命」がたまらなくスリリングで、好きなのです(あ、ドラム、またまちがえた!!...とか..ネ)。この意味で、同じキーボード・トリオでも後発組の「UK」なんかは、EL&Pに比べると、なんか完璧なテクニシャンの3人が余裕タップリに演奏してる感じで、スリリング感に欠ける気がしています。(この感じ、解ってもらえますか??)。
 あと、トリオ編成のロック・バンドで、「キーボードがリズムキープをやって、ドラムとベースはそれに合わせて弾く(叩く)」とゆ〜びっくり前代未聞の演奏形態を誇るのも、たぶん彼らだけです。だから、「キーボードについていけなくて、ドラムとベースがモタる(笑)」なんてのは彼らのバアイ日常茶飯事でしたね。でも、大好きなの。
 本作は、明らかに彼らの最高傑作である30分の大作「悪の教典#9」をフューチャーしており、まさに手に汗にぎる、大エンターテイメントのロックンロール・サーカスが満喫できます。妙に「肉体派プログレ」に賛辞を送りたくなる1枚です。
 
Every Good Boy Deserves Favour
The Moody Blues
1971年:イギリス
 ムーディー・ブルースの通算6枚目のアルバムにして、最高傑作。邦題は「童夢」。美しいジャケットに象徴される、ロマンチックで牧歌的、かつ宇宙的なポップ・アルバムです。
 ムーディー・ブルースというと、一応プログレッシブ・ロックにカテゴライズされていますが、それは歌詞の精神性とメロトロンの使用によるところが大のようです。音楽的には難解な部分は全くなく、誰もが楽しめる、親しみやすいポップ・ロックを志向しています。
 特に本作は、メロディー・ラインの美しさがバツグンで、全体にアコースティックな印象の歌物をスペーシーなメロトロンで包み込んだ、「名作」と云えるでしょう。
 あとムーディーズといえば、メロトロンの先駆者としても有名ですが、マイケル・ピンターのメロトロンには世界で唯一無比の特徴的な奏法が1つあります。それは「ピッチベンド」です。実は私も以前メロトロンを愛用していたので良く解っていますが、あの楽器は一旦ピッチを変化させると、ツマミを戻したぐらいでは決して元の音程には戻らないです。それを彼は、リアルタイムに音程をグイグイ上下させる奏法を多用しています(しかもライヴでもやってしまうからコワイ...)。やはり彼のメロトロンはカスタム・メイドだったのでしょうか??
 
In The Court Of The Crimson King
King Crimson
1969年:イギリス
 ご存知キング・クリムゾンの偉大なるデビュー・アルバム。ブリティッシュ・ロックの歴史上、「至高の宝」といえば、本作をおいて他にありますまい。それほどに「歴史を完全に塗り替えてしまった一枚」なのです。
 私が本作を初めて聴いたのは高校生の頃ですが、その時の衝撃たるや、脳が炸裂するかと思いました。1曲目「21世紀の精神異常者」のアナーキーな暴力性にも圧倒されましたが、やはり圧巻は3曲目「エピタフ」と5曲目「クリムゾンキングの宮殿」のシンフォニックなドラマ性でした。
 クリムゾンといえばリーダーはかの有名なロバート・フリップ氏ですが、本作のみ、主人公は完全に、マルチ・プレーヤーのイアン・マクドナルドです。彼の頭の中にあった音楽を他のメンバーの力を借りて具現化したのが本作であると言えそう。ただ一般にクリムゾンといえば、この頃のシンフォニックなイメージがあまりに強烈過ぎたために、「初期はシンフォニック・ロックで、後期はジャズ・ロック」みたいに言われていましたが、その後に発掘されたこの頃のライブ聴いてみると、彼らは最初からインプロヴィゼーションを主体とした「ジャズ・ロック」バンドでした。その意味では、本作は彼らの代表作であると同時に「異色作」でもあるのです。
 あと、本作のマイケル・ジャイルズの超人的なドラミングはあまりにも有名ですが、一説では全篇を通じて「テープの遅回し」で録音されているというウワサがあります。つまり通常の再生状態で、早回しで再生されるようになってるんだって説。まあ、そう聴こえなくもないですが...(ライヴではちゃんと叩いているしね...)。
 
Close To The Edge
Yes
1972年:イギリス
 みなさんご存知イエスの5作目で邦題は「危機」。まさに70年代ブリティッシュロックの金字塔です。全篇を通じての透明感のあるカラフルなサウンドと、シャープでタイトなリズムセクションの絡みがたまらない名盤です。宇宙的なサウンド・イメージの広がりも申し分なく、イエスらしい美しい曲想が十分に生かされています。
 1曲目18分近いタイトルナンバーは、なんとロックにあるまじき、全篇ほとんど「3拍子」なのですね。「最も偉大なるロック・ワルツ」と呼ばれています。あと、2曲目の「同志」は、実は私がイエスのナンバーで一番好きな曲です。全体に牧歌的な曲想とともに、特にリック・ウェイクマンのシンフォニックなメロトロンが広がる中間部は圧巻です。(ジョン・アンダーソン自身も特にお気に入りの曲らしく、今だにイエスのライヴでは必ずといって良いほど演奏されますね)。
 ちなみに本作以前のイエス(「こわれもの」まで)は個人的にはちょっと苦手です。音楽が「線」で構成されている気がして、和声的な「面」の広がりに欠ける印象があるからです。また本作以降は何作か素晴らしい作品が続くイエスですが、やはり本作が最高傑作でしょう。
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いるという